2008年2月20日号
<江戸の技と知恵の歳時記>
第2回 雛祭りの白酒

『江戸名所図絵』鎌倉町豊島屋酒店白酒を商う図

 右大臣が頬を染めたと歌われる白酒。江戸の庶民にとっても、楽しみな春の味覚だったようだ。

 『江戸名所図会』に、雛祭りの時期にだけ売り出される白酒を買い求めようと、大勢詰めかける様子が描かれている。賑わいの中心は、神田・鎌倉河岸の豊島屋(現在の豊島屋本店)。「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」とまでいわれ人気を博したという。

豊島屋本店の白酒
http://www.toshimaya.co.jp/

 豊島屋本店が江戸以来守る製法によると、白酒は、蒸したもち米と麹を合わせて味醂に仕込み、できたもろみを2ヵ月ほどねかせたあと、石臼ですり潰してつくられる。

 酒造技術がそれほど発展していなかった江戸の町では、酒はもっぱら関西からの下り酒。白酒はいわば江戸発のリキュールだった。酒屋兼一杯飲み屋を営んでいた豊島屋十右衛門の夢枕に紙雛様が立ち、おいしい白酒の製法を伝授してくれたという風流な逸話が残されている。

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