スターライト法務相談
司法書士 星野大記
<Q>
Xさんは、3人兄弟の長男です。5年以上前、母親(A、配偶者である父親Bは数年前に他界)が亡くなり相続が開始しました。生前,母親は自分の財産を長男(X)と次男(Y)で半分に分けてほしいとXさんに言い残していました。本来であれば兄弟3人での3分割となりますが、三男(Z)は,数年間連絡が取れなくなってました。
しかし、先日、葬儀にも参列しなかったZが、母親が亡くなって5年以上も経って、Xさんに財産を分けろと怒鳴り込んできたのです。
この場合、XさんはZに財産を分けなければならないのでしょうか?
<A>
原則として、X、Y及びZは、Aの相続財産を各3分の1ずつ相続するので、Zにも財産を分けなければなりません。
Aが、生前、自分の財産を長男(X)と次男(Y)で半分に分けてほしいと言い残していたとしても、法律上の拘束力がないため、原則として、法定相続となります。
したがってX、Y及びZは、Aの相続財産を各3分の1ずつ相続することになります。
ただし、この3兄弟間(XYZ)で、遺産分割協議(民法907)が成立すれば、Aが言い残したとおり、XとYの半分で分けるとすることも可能です。
もっとも、これにZが同意することはなさそうですね。
【対応例】
Aの生前に「財産を長男(X)と次男(Y)に各2分の1ずつ相続させる」とうい内容の遺言(民法967)を作成しておいてもらえば、Aの言うとおりとなりえます。
この場合、Zには、遺留分(民法1028)として財産の4分の1を相続する権利がありますが、XとYに対し、Aの死亡を知ってから1年以内に遺留分を減殺する請求をしなければ、この遺留分減殺請求権は、時効消滅し、死亡から10年経過すると、たとえZがAの死を知らなくても、消滅します(民法1042)。
また、仮にZが遺留分を得たとしても、XとYは、各8分の3ずつを相続することになりますので、メリットはあると思われます。
●自筆証書遺言の作成方法
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言又は特別の方式による遺言がありますが、もっとも作成するのが簡便なのが、「自筆証書遺言(民法968)」です。
自筆証書遺言としての要件は、次の2つです。
(1)遺言者が全文、日付及び氏名を自書する。
(2)印を押す(認印でも可)。
記載例
なお、自筆証書遺言の文言を加除変更するには、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更場所に印を押さなければなりません。この方法は繁雑なので、加除変更する必要がある場合は、全文を書き直すことをお勧めします。
では、日付が、(1)「平成20年1月吉日」と記載されている場合 (2)パソコンで内容を打ち、プリントアウトした紙の氏名の後ろに押印した場合は、有効でしょうか。
答えは、(1)(2)共に、無効となります。日付は、年月日をきちんと明記しなくてはなりませんし、自筆証書遺言は、全て自書しなくてはなりません。
また、文言が不明確であったりすると、法律上、遺言者の意図したとおりにならない場合もあります。
遺言を作成したら、意図した内容が正しく反映されているか、専門家に確認してもらうとよいでしょう。