2008年1月21日号
<江戸の技と知恵の歳時記>
第1回 湯たんぽ
昨今の原油高も手伝って、湯たんぽ人気はいよいよ高まるばかり。暖房費が抑えられるのはもちろん、穏やかな温かさが身体にちょうどよく、残り湯も使えるし、放っておいて火事になる心配もないし…と、確かにいいことずくめ。
湯たんぽは室町時代に中国から伝わり、江戸時代には庶民の間でも使われていた。当時の主流は陶製。一升徳利や花瓶の変形など代用品のようなものもあったが、多くはシンプルな四角やカマボコ型だったようだ。おなじみの金属製小判型が登場するのは大正になってからのことである。
ところで、湯たんぽは漢字で書くと「湯湯婆」。「婆」はおばあちゃんではなく「妻」の意味だ。原語では「湯婆」だけで湯たんぽを表すが、後にわかりやすくするために「湯」が追加されたとか。実は反対に、夏に涼を取るために用いられる「竹夫人(チクフジン)」も江戸時代には流通していた。これは竹を編んで細長い筒状にした抱き枕のようなもの。俳句の季語にもなっている。
そんな安眠の伴侶をなんと犬にしてしまったのが、5代将軍・綱吉。いうまでもなく生類憐れみの令で有名だが、夢の中まで一緒とは……。銅製の犬型湯たんぽが、日光の輪王寺に収蔵されている。
綱吉は中野に大規模な犬小屋をつくらせており、その縁から、中野区立歴史民俗資料館では犬型湯たんぽのレプリカを作成、展示している(写真)。実物は、左耳をはずして湯を入れられるようになっている